昨年、「私大文系入試における数学受験ついて」という記事を書かせていただきました。多くの方にお読みいただき、そして、ご意見をいただき、ありがとうございます。参考までに以下に再掲載させていただきます。
『今回は私立大学文系入試における、数学受験、地歴(政経)受験の選択について考えてみたいと思います。2014年以降の入試を考えている方の参考になれば幸いです。
当教室では、国公立大学を第一志望にしている受験生が多いため、数学で受験する人が大半です。ただ、数学をあまり得意にしていない受験生は、10月~12月の段階でもまだ迷っていることもあります。「数学は自信がないから、地歴で受験しようと考えているのですが、いかがでしょうか?」こういった相談を受けることが少なからずあります。
当教室では、数学受験を検討している受験生には、数学受験を薦めます。理由はいくつかあります。
まず第一に、数学受験は失敗が許されないように思われますが、たとえ解けなかった問題が多かった場合でも、得点調整が行われることで、地歴受験者に対して大きな不利にならないことが珍しくありません。関西学院大学や立命館大学においてその特徴は顕著で、今年の受験結果から鑑みても、数学の失敗は許されても、英語・国語の失敗は許されないといった印象でした。実際、数学はあまりできなかったにもかかわらず、英語・国語できちんと得点できたので合格した受験生が多かったです。逆に、数学ができたのに、英語・国語で失敗したため、不合格になった受験生もいました。やはり、私立大学文系入試においては英語・国語の出来が最も重要なのです。
また、私立大学専願の受験生にとっては、英語・社会・国語の3教科で勉強する場合、どれも文系教科で「息抜き」の科目がないように思われます。一方、英語・数学・国語の3教科で勉強すると、数学という理系教科を勉強することになり、気持ちの面で切り換えて勉強できます。長い受験生活を考えると、こういった「息抜き」科目の存在は大きいような気がします。
ここからは主に国公立大学を志望している受験生の視点から考えてみますが、センター試験を除いて国公立大学の2次試験で地歴が必要な大学は限られているため、センター後、地歴の勉強に時間をとられるのは大きな犠牲になります。私立大学文系の入試問題は、センター試験と国公立大学の橋渡しとなる問題が多く、2月初旬~中旬に行われる入試に向けての勉強は、国公立大学入試に向けて大いに役立ちます。
さらに、数学受験が優遇されている大学があることも挙げられます。例えば、慶応大学経済学部、商学部は数学受験(商学部は数学に加えて地歴も必要)の合格者数を地歴受験者よりもそれぞれ2倍、4倍多く設定しています。国公立大学と併願する学生が多いのですが、数学受験者はかなり有利です。また、中央大学法学部のように、英語・数学・国語・地歴(政経)といった4教科受験を実施している大学もあり、やはり数学受験ナシの3教科よりも合格しやすい状況です。
最後になりましたが、私立大学文系の数学の問題は典型問題がほとんどです。過去問を中心にしっかり練習を積めば、高得点が期待できます。例えば、関西学院大学の記述問題(大問3)は微積分の出題がほとんどで、演習することで大きな得点源となります。当然地歴においても練習を積めば高得点は取れるので、数学が有利になる理由にはならないかもしれませんが、決して数学受験は不利になることはないということを理解してもらえればと思います。
国公立大学を併願する受験生にとっても、私立大学を専願する受験生にとっても、数学受験は考えてみる価値のあるものだと思います。そして、合否を決めるのはやはり英語・国語に頼るところが大きいのだということを再度お伝えして、終わりにしたいと思います。』
以上が、昨年の記事です。
昨年お伝えした考えに変化はありませんが、今回2014年版として、同志社大学経済学部に合格した受験生の結果を参考に、同志社大学の数学受験について今一度考えてみたいと思います。
昨年は関西学院大学、立命館大学についてはほぼ全員が合格したのですが、同志社大学は厳しい状況でした。中央大学法学部(4教科)に合格できる力を持っていても、同志社大学法学部には合格できなかったという受験生もいました。確かに同志社大学の数学はやや難し目の印象です。ただ、難しいなりにも基本的な問題もありますので、そこがきちんと取れると社会(地歴)の受験生に対して不利になることはないだろうと考えていました。ただ、去年の結果を見ると、数学受験者の合格率が悪かったため、同志社大学は社会の方が合格しやすい(得点しやすい)のかもしれないという印象を受けました。実際、現役生が、社会(日本史)で合格しております。しかし、今年の結果を見る限り、基本的な問題をきちんと解ければ社会受験生に対して、不利になることはないと示してくれました。
報告をしてくれた受験生は英語、国語、数学での受験で、結果は英語、国語ともに7割で、数学が5割5分というものでした。数学は自分自身では3割程度の出来を見込んでいて合格を厳しいだろうという印象を持っていたようです。確かに、複素数など解きにくい問題が多かったため、高得点は望めなかったかもしれません。ただ、前述のように基本問題はありますので、そちらをきちんと得点した結果が3割ということでした。それが開示結果ではほぼ2倍の得点になっていることからも、社会受験者(同志社大学の社会は選択肢がやや細かいと聞きました)に対してそこまで大きな不利になっていないことが予想されます。(昨年の受験生の失敗要因を予想すると、数学の基本~標準問題で取りこぼしがあったか、英語、国語が7割を下回ったことが考えられます。)
やはり、英語、国語で7割を確実に得点することが一番大切なことです。来年以降、私立大学を数学で受験しようと考えている方は、まずは英語、国語の学力を身につけましょう。その上で、数学の基本~標準問題を解く力を磨いていけば、社会受験者と勝負できるのではないでしょうか。
同志社大学の数学の問題は制限時間内には解けないであろう問題(主に大問2の後半または大問3の後半)がありますので、そういった問題を除いた大問1、大問2・大問3の前半部分で確実に得点する練習を制限時間を設けて行いましょう。